歌は信じられない力をくれる

 父が亡くなってから1カ月が過ぎた。
 なんだか、あっという間だった。


 先日、歌手の島倉千代子さんも亡くなったと知った。
 年が父と近いので、同じ時代を見てきた仲間のような気がした。
 亡くなる3日前にレコーディングをしていたその声は、
 力強さはないものの、さすが歌手、音程は素晴らしかった。


 実はうちの父も、亡くなる1週間前というか、
 夜中や朝に、せん妄なのか1人でよく喋っていた。
 みんなに何か説明した後に、自分の自己紹介していたり、
 仕事をしていたり、ドライブしていたり……
 その都度、私と母は話を合せてあげていた。
 時には母に
 「今まで苦労かけてごめんね」
 「いつも喧嘩ばかりしてごめんね」
 と懺悔みたいなことを言うようになってきた。
 それはもう自分の命が長くないとわかっているかのようだった。
 

 そんな父も亡くなる3日前、夢の続きのように
 歌を歌いはじめた。
 結構しっかり声が出ていたし、
 終ったら、拍手もしてあげたよ。
 亡くなる日の夕方も、私が父を励ますために、代わりに歌ってあげると
 その時は、かすれかすれの声だったけれど、
 歌いだして、先生と連絡を取り合っている看護師さんが驚いていたもの。
 父はカラオケが好きだったからね。
 できれば、もっと歌わせてあげたかったけれど、
 これだけは仕方ないよね。



 ナナ:「そういえばボク達のママもよく歌っているチュチ」
 りん:「メロディーは聞いたことあるチュピだけれど
     歌詞が毎回違うので覚えられないチュピ」
 ナナ:「でも、ママの囀り、ボクは好きチュチ……」


 ナナは私が歌うと、合いの手みたいに、
 「チュッ」「ぴーー」
 って一緒に囀ってくれるんです。
 律儀でしょ。



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