自分で自分を

 「あれ? データをCDにきちんと入れたかな?」
と急に不安になり、私はバス停に向かう坂道を引き返したのは昨日の朝の事だった。
 自宅にに戻りパソコンに電源を入れている途中に、データ保存した記憶が甦ってきたが、もうバスには間に合わない為、念のため中味を確認して家を出た。昔、
  『自分で自分を褒めてあげたい!』
と女子マラソン有森裕子さんが残した名言があるが、その時の私の心境は
 『自分で自分を信じてあげたい(あげれば良かった)』
と馬鹿な事を考えながら、会社にデータを届け、茶道の稽古に向かった。あらかじめ先生には、バス1本遅れるので待たないで皆さんでお稽古を始めて下さいと連絡しておいた。
 乗り継ぎのバスの時間まで約10分あったが外で待つことにした。バス停には2人のオバア様達がいた。乗るバスは違うようだが、顔見知りのようだ。ついつい会話が耳に入ってくる。
 Aさん「……略……奥さん、まだ若いからいいわよ」
 Bさん「私、若くないよ来年で90だもの」
 Aさん「だって私は90半ばなのよー」

 《ヒーハー!》
と私は叫びたかった。2人とも背筋ピンと伸ばして歩けるし、すごすぎるよ。
 私はあの年齢まで長生きできるだろうかと思った。Aさんは身長が130センチ位で小さくて顔には沢山の皺があるが、笑顔がとても可愛い。Bさんは話し方も上手で、おしゃれな格好をしていたように思う。
 バスは15分遅れで到着して、手と足のつま先が少し痛いくらい冷え切ったが、暖かいバスに乗ると、バスの運転手さんには怒りはなかった……


 今日は夫は忘年会に出かけていった。強制的に二次会もセットされているとの事だから、帰りは遅いだろう。浴びるようにお酒を飲んでくると思うので、明日の朝は「シジミの味噌汁」作らなきゃ。
 夜はのんびり長風呂して時間があるようだったら、年賀状作りをしよう……と頭の中では考えている。