別れは突然に……

 その夜、先生が往診に来てくれ、今後の治療方針を相談する。
 痛みとストレスを緩和する為に、モルヒネを使う方法があると言われる。でもそれは決して治療ではないとも言われる。
 モルヒネは決していい薬とは言えないし、7割ほどしか苦痛をやわらげる事は出来ないらしいが、悩んだあげく家族はモルヒネを選択した。
 浣腸タイプのやつで4等分に切り6時間おき位に挿入しなくてはならない。次は夜中の3時だ。
 私達は目覚ましをセットし、ルーク、母、父、そして私がルークの頭が見える位置に布団を敷いて寝た。
 獣医が最初のモルヒネを挿入した時、落ち着いて寝ていたが1時間もしないうちにまた、苦しみ出した。全然薬は効いていないじゃないかと家族は落胆した。両親は連夜の疲れが出たのかウトウト眠り始めた。
 ルークは苦しさのあまり、背泳ぎのような状態で布団をズリ上がって私の方にやってくる。私はそれを腕枕のように頭を支え、体をさすって抱き締めてやる。一度は落ち着くが、30分おきのように繰返した。3時になり母がモルヒネを挿入するために電気をつけ、私は交代するように眠りに落ちた。

 母にペット用のオムツを頼まれショッピングセンターに行く。そして昼食の準備をし、夫が昼過ぎに迎えに来てくれたので一時自宅に戻った。
 そして弟嫁と電話で話している時、携帯電話が鳴り、父が何か言っている。その電話からは母の何とも言えない泣き声が聞こえてきた。
 「ルークがついさっき、息をひきとった……」
と。
 私は帰る間際、
「ブログにルークの頑張ってる姿を載せるからね」
とオムツを買う時に一緒に買ったクリスマス仕様の音の鳴るボールをルークに聴かせ、横において撮影した。まさかその時は2時間後に死んでしまうなんて思っていなかった。