家族も覚悟しなければ……


 「仕事が忙しいなら、そちらを優先しなさい……」
と昨日母に言われたが、何故か落ち着かなくて、やはり今日はナナを連れてルークのお見舞いに行って来た。
 病室で点滴を受けるルークの瞳は虚ろだった。聞けば、横になって寝ているが母のそばに頭を寄せてくるという。その話を聞くと自分がもう長くないということを悟っているのか。血液がうまく流れないのか、手足があまり暖かくない。ずっと同じ姿勢で寝ている。
 昼食におにぎりしか持って来てないと言うので、私はひじき入りの玉子焼きと野菜サラダとハーブティーを差し入れた。狭い病室の中で私達はそれをおいしそうに食べた。
 私達が食べる姿を見て、ルークも食欲を増すのを期待したが駄目だった。私が持っていった太巻きの玉子を少し潰して与えると、ほんの少しだけ食べた。

 昼食をとりながら母が言う。
「Tさんに一度、担当医の事を話した所、担当医を院長に替えてもらいなさい」
とアドバイスされた事があったそう。その時替えてもらっていればもしかしたらと……
だから、ルークは私の事を恨んでいるのかも知れないと涙をこらえて言う。
私は「そんなことは、ないって!」と励ました。
 でも母は行動が早い、院長を担当医にしてもらっていた。私もナナが病気になったら、院長に担当してもらおうと思う。

 ルークの見舞いに来たナナだが、無邪気というか水道の水で水浴びを始めた。
 きっとルークに懸命に見せてあげているのだと思った。
 きっとナナはルークの病気の内容は理解してないと思うが、ルークが元気ないと言うことだけ理解している。
 少し暗い雰囲気になった病室に笑顔が戻った瞬間だった。