『下克上』

 『お宅もとうとう、やっちゃいましたか……
      仲が良さそうに見えたのですけどね』


 と、この記事を書いたら、コザクラを飼っている皆さんに言われそうな言葉。
 今日の11時過ぎ、ナナがくつろいでいる場所から、私とりんのいる場所に
 ゴハンを食べに戻ってきた。
 りんは今朝から異常にガブガブするので、ハウスに入れて落ちつかせたりしながら私は仕事をしていた。
 ハウスに入れられたりんは、最初暴れていたが、そのうち
 「りんりーん」と喋り出し、機嫌が良くなったように思えた。
 そしてナナがミニハウスでゴハンを食べ、りんが近づいたので
 私は、「りんのはコッチよー」
 と念の為、引き離した。
 ほんの少し目を離したら、喧嘩になっておりナナが飛んで逃げた。
 でも、ナナの動きが変。
 見ると左目を羽根の付け根にこすりつけている。
 そして流血している。私はすごく慌てた。
 ナナが付け根を気にしているので、「ここから血が?」
 と思ってみたが違う。でも少しすると血は止まった。
 20分位して、血も止まったようだからナナをつかまえて、
 汚れた所を真新しいタオルを濡らし、少し拭いてやった。


 ……これがいけなかった……(後で知ることに!)
 ナナが少し変な鳴き方をしたなと見ると、さっきより流血し、
 左目の周りが真っ赤になり、私も血の気が引くのを感じた。
 ナナもどうしていいかわからず、私に助けを求めて鳴く。
 やっと捕まえ、そして、テイッシュで抑えた。
 時計を見ると12時過ぎている。動物病院は午前の部が終了してしまった。
 とりあえず、電話をかけ、止血方法を尋ねる。
 「テイッシュを折って傷口を押さえ、20〜30分じっとしていて下さい
  それでも流血が止まらないようでしたら、急患で診療しますから」
 と言われた。


 いつもお利巧なナナだが、今日は駄目だった。
 5分としてじっとしていない。
 きっと傷口がドクドク痛むのだろうな。
 幸い血は止まり一安心したが、傷口が気になるのか、こすりつけて
 また流血、止血、流血の繰返し……
 もう、私は死に物狂いだった。
 病院の午後の部は4時から。
 それまでなんとか悪化しないでくれと祈った。
 なんだか目の間から血が流れているようにも見えた。
 「まさか、眼球からも出血しているのでは……」
 と不安がますます募る。
 病院に行って1回目の流血……トイレに行き止血する。
 2回目の流血……受付の所までいってあとどれくらい待つかと、流血を伝える。
 看護師が見に来てくれた。
 「まだそんなひどい出血ではないですね。
  次ですからもう少し大人しくしていてね」


 なんだとぉーー、ナナはこんなに流血してるのにーー


 そして診察室へ。
 院長に説明をし、まずは眼球を見てもらう。
 幸い目には外傷はなかった。
 傷も目の下にあるだけ。
 ナナが傷口を何かにつけてこするので、エリザベスカラーもダメ
 布で囲ってもこするたらダメ、止血剤は目だけに失明するから駄目。
 結局こすりながら、流血を繰返しながらでも、薬を使えば
 4、5日で傷口はふさがるはずという。
 ナナは片目をつぶりながら、ゴハンだけは必死に食べている。
 「やけ食いですね」
 と先生が言う。


 結局、軟膏と飲薬を処方してもらう。
 流血したら、私が必死で10分以上抑えて止血すると先生に約束する。
 特別、暗くしなくてもいいし、いつものハウスに入れてあげなさいといわれた。


 自宅に戻り、少し落ち着いてから薬を飲ます。
 ナナの必死の抵抗にあいながら何滴かは入ったはずだ。
 普段はもう寝ている時間だが、今日だけ飲み薬をまた飲ませなくては
 ならないので、居間で寝かせて様子を見ている。
 あれから、こすっているようだが、まだ流血はしていない。
 拭いてあげたいが、濡らすと逆効果。
 余計気にしてしまうそうだ。
 カペカペの状態だが我慢してもらっている。


 りんはナナのハウスの前に行き、突然
 「クイッークイッー」
 みたいな悲痛な声で鳴いた。
 謝っているのだろうか? 
 そしてナナのハウスのまわりにまとわり付くりん。
 でも、ナナも疲れてイラッとしているから、今度はお互いに足攻撃が
 始まりそうになるから、りんを引き離した。
 (反省してないのか!)
 その時、私もりんに、人差し指を噛まれた。
 後で見ると私も流血していた……